春九色

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それから3ヶ月くらい、週に2回、決まって先生は僕の担当になった。
勉強はやっぱりそんなに好きじゃなかったけど、先生が話す少しどこかの訛りが混ざった言葉が、だんだん耳になじんでいた。
ある日先生は、僕のよく知らない高校生の授業をしていた。僕が知ってる先生は、どこかよそよそしい話し方で、作られたような笑顔で、これ以上は近付くなって言ってるみたいだったのに、その高校生とは友だちみたいにしゃべってた。
先生には、僕以外にも生徒がいるなんて当たり前だし、別に不思議なことでもない。そんなことは分かってた。先生を独占したいとか、そんな気持ちになったわけでもなかった。
やっぱり僕は、他人に心の中まで入ってきてほしくなかったし、先生は、たくさんいる先生の中の1人だった。
だけど明確に少し、先生の作られてない笑顔が知りたくなったんだ。

続く

3/12/2023, 12:33:09 PM