わに

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夜と朝の間の、なにものでもないその時間に、私はシングルサイズのベッドの中でじっと彼の寝息を聞いている。
カーテンの締め切られた部屋。黒い絵の具をぶちまけたような視界でも、不思議と彼の姿だけは鮮明に見える。私よりも長い睫毛が微かに震えるのを見つめながら、あと何度、こうして眠ることができるのだろうと、そんなことばかり考えている。
起こさないようそっと触れた頬が、なんだか普段よりひんやり冷たい。私はそれだけでワッと声を上げて泣きたくなって、ツンと痛む鼻の奥、耐えるように瞼を強く閉じた。
毎晩こうして、いつか訪れる別れにひとり怯える私を知ったら、あなたはなんと言うのだろう。
叶うならば、馬鹿だと笑い飛ばして、永遠にそばにいると言ってほしい。永遠なんて無いと知っていても、そう言って、私を力いっぱい抱きしめて欲しい。
微かな寝息に耳を立てる。瞼を閉じた視界にあなたは映らない。それがどうしようもなく恐ろしくて、私はまだ、眠れそうにない。



#怖がり

3/16/2024, 12:00:19 PM