今日の天気予報は晴れ。
カーテンから差し込む朝日は、優しくカナリアを包み込んでいた。
こんな天気のいい日は家になどじっとしてはいられない。カナリアは、そそくさと朝食をすませ、身支度を始める。それを見ていた母親がため息を付いた。
「カナリア、夏休みだからって遊んでないで勉強しなさい」
「勉強も大事だけど、遊ぶことも大事」
お気に入りの靴を履きながらいう。
「遊んでばかりじゃない」
「お母さん、遊びは経験だよ。人間形成する上で一番大事なんだよ」
「もう、そんな屁理屈ばっかり言って」
「お母さん、私にとって16歳の夏は今しかないの。2度と経験できないのよ。だったらもっと楽しまなきゃ!」
「あ母さんは、遊ぶのも大事だけど、勉強も大事っていう話をしてるのよ」
「わかってる、帰って来てからやるから」
「必ずよやるのよ」
「気が向いたらね。行ってきます!」
そう言って、カナリアは家を出て行った。
「あっ、ちょっと」
もう! と、怒る母親に後ろから、「まあいいじゃないか」と、父親が声をかける。
「そんな怒るなよ」
「お父さんからもちゃんと言ってよ」
「俺はカナリアが元気であればそれでいいぞ」
「もう、本当にカナリアに甘いんだから」
「俺は娘に嫌われたくないんだよ。それに、お母さんがカナリアに厳しくしてくれるから、俺は甘く出来るじゃないか。アメとムチでバランスいいだろ?」
笑いながら言う父親に「物は言いようね」と、呆れたように母親は笑う。
二人は、カナリアが出て行ったドアを見つめ、
「こっちに引っ越してきて本当に良かったな」
「そうね。また、あの子の笑顔が見れたんだもの」
そう言って、涙ぐみ笑った。
今日はこの自転車に乗って何処へ行こう。あの白波がたつ海、あの猫達が集まる神社、緑が多く暗いが神秘的な湖。それともまだ知らない場所を開拓するか。
カナリアはワクワクしていた。ペダルに足をかけ勢い良くこぎだす。
「I am free!」
そう叫び、下り坂を颯爽と駆け抜けていった。
-- 終わり--
By ゆさ(noteにて小説と詩を投稿しています)
8/15/2023, 2:29:12 AM