檸檬味の飴

Open App

身体の芯から震える程の寒い夜。

私は、部屋で一人寂しく炬燵でみかんを食べていた。
テレビを見ていると、アナウンサーの口から知れた言葉が聞こえた。

ーと、いうことで、ついに今日はクリスマスですね!
どうでしょう、皆さんは如何お過ごしですか?ケーキを食べたり、子供たちはプレゼントを首を長くして待っていることでしょう。今回はクリスマスにぴったりなグッズをご紹介します!…ー


「今日、クリスマスか……」


最近は仕事で手がいっぱいだったから、忘れてた。
確かに、いつも何喋りかけても「なんですか」とか「そうなんすね」とかぶっきらぼうな後輩も、
少しうきうきしていた気がする。

「でも、や、やばいぞ、こ、今年は一人でクリスマスを過ごす上、悪くいけば年越し一人なのでは…」

去年は実家にいたので家族と過ごしていたものの、今年はこのご時世もあって実家には帰れなかった。

ケーキでも買ってこようかと考えていると、家のベルが鳴った。




ピーンポーン。




「はーい。」


とは言ったものの、こんなときに誰だろう。クリスマスでみんな忙しいのかと思っていたけれど…。

がちゃっと扉を開けると、そこにはぶっきらぼうで有名な後輩、塩戸くんがいた。


「ども。」

「え、どうしたの?」

「先輩、今日予定ありますか」

私は目を丸くした。とりあえず素直に、

「な、ないけど…」

と答えると、


「じゃあ俺と一緒にクリスマスっぽいことしませんか」


淡々と言う彼の耳は仄かに赤を帯びていた。私は戸惑った。


「クリスマスっぽいこと…?」

「と、とりあえず外行くんで出掛ける準備してください。俺赤目駅で待ってるんで」

「分かった…。」

「じゃ」


と行ってしまった。


私はぽつんと玄関に立っていた。


〈ベルの音〉12/21

12/21/2022, 8:20:19 AM