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『どこにも行かないで』

駅のロータリーに立っていた。
どうやら約束の時間には遅れてしまったようだ。

とあるアプリを通じて知り合った人達と、今日あることを決行するつもりでいた。

それなのに、どうして自分はこうなんだろう。
いつもいつも、ここぞという時にヘマをする。

今からでも彼らを追うべきか。
でも、追いついた時には事は終わっているかもしれない。
そうしたら、彼らの邪魔をしてしまう。

いつものように優柔不断に迷い続けていると、電源を切り忘れていたスマートフォンから着信のメロディーが鳴った。

「もしもし?! 早まるなよ! そこにいろよ! どこにも行くな! わかったな!」

こちらが一言も発しないうちに、言いたいことだけ言って切れてしまった。

あの人はいつもそうだ。
私の言う事なんてこれっぽっちも聞いてくれやしない。
あの人だけじゃない。
みんな私のことなんて見向きもしないし、どうでもいいんだ。
アプリで知り合った人達だって、私を置いて逝ってしまったし。

どうしようかと考えていると、ショートメッセージが着信を告げた。

「どこにも行くなよ、頼むから」

もう一度だけ、思いとどまってみようか。
あの人に、どうして私の居場所を知ってるの?と聞くために。

6/23/2025, 9:20:44 AM