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薄く開いた扉の向こうから、
言い争う声がする。
物がぶつかる音やすすり泣く声も、聞こえてくる。
内容はわからない。
たぶん、お金か僕のことなんだろうと思う。
2人が言い争う時は、だいたいその2つのうちのどちらかだから。
扉はそのままにして、布団に潜り込む。
聞きたくはないけど、聞かないといけないのかもしれない。
体を丸くできるだけ小さくして、目をつぶる。布団は冷たい。それはおねしょをしたからだ。できるだけ濡れていないところにいく。

今日のお昼までは楽しかったのにな、と思う。
3人で、外でご飯を食べたのだ。
何でも食べていいと言われたので、びっくりした。
うちにはお金がないと思っていたからだ。
でも、お金ができたのかもしれないと思って、ハンバーグのセットとアイスクリームを頼んだ。
アイスクリームはチョコ味だ。
アイスクリームも頼んでいいよと言われたから、そうしたのだけれど、それは間違いだったのかもしれない。
僕にはそういうところがあって、だいたい何か間違えて、みんなの空気を悪くしてしまう。
楽しい時は要注意なのに、それを忘れてしまっていた。

ハンバーグには目玉焼きが載っていて、横にはポテトが載っていて、鉄板がじゅうじゅう音を立てているのを見たら、悪い空気のことを忘れてしまっていた。
もしかしたらあれはテストで、そこに気づくかを見られていたのかもしれない。それに、鉄板の上に乗っていた、コーンとマメのやつは色が気持ち悪いから残した。それも良くなかったのかもしれない。
アイスクリームを選んでいいと言われてバニラじゃなくてチョコを選んだのも、今思えば良くなかったような気がする。

スプーンでチョコアイスを救って、口に入れた時、甘くて美味しい味がいっぱいに広がって、目が開いた。
そしたら、それを見た2人がにっこりしてくれた。
口元が汚れていると言って、紙で拭いてくれた。
その時も、2人は笑っていた。
チョコアイスの味と同じような気持ちになった。甘くて広がる感じだった。もっと食べたくなるような気持ちだ。ずっとこのままだといいのにとお祈りするような、そういう気持ち。

僕はまた失敗したのだ。 だから、ずっとこのままにならない。
そのことが悲しくて、少しだけ泣いた。

1/13/2023, 12:54:41 AM