蓼 つづみ

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バレンタインに鼓動を仕込んだのは、確かに私のはずだった。
それなのに、 どういうわけか、 効いてくるのは、いつも少し遅れて、こちら側だ。
日付なんて覚えていないふりをしている。 気にしていない顔で、 いつも通りに過ごしているつもりなのに、
なぜか、そのあたりだけ、 予定を入れそびれている。

白い箱が増えていく。 店先の隅で、静かに積み重なっている。どれも軽くて、 同じ顔をしている。
季節が、そうさせているだけだ。
あの日のことも、 もう終わった出来事として、 きちんと扱えている。

だから、 何も起きなくても、困らない。
——はずなのに…。

通知が鳴るたび、 ほんのわずかに、呼吸が揺れる。
すぐに整えて、 何もなかったみたいに戻る。
それを、 何度も、繰り返している。

通知が鳴る。
見慣れたアイコンに、
鼓動が一拍、増える。

投げ込まれた文字は短かった。
『14日、会える?』

題 胸が高鳴る

3/19/2026, 12:40:26 PM