微睡みの中

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【#17.またいつか】
暑くて汗がベタベタして気持ち悪い。
道端に地面で踏ん張って空を見上げるひまわりが羨ましくてたまらない。この辺りでは山ばかりだから都会と違って暑いんだよ、と一学期の終業式に転校してきた葵に言う。
「夏は好き?」
そんな葵は夏生まれだからなのだろうか。目を輝かせながらそう私に聞いてきた。
「ここら辺じゃ蝉が五月蝿くてゆっくり眠れないから嫌いだね。」
「そっかぁ、、、、」
葵は何処か落ち込んだような顔をして俯く。
言いすぎただろうか。でも嫌いなものは嫌いだ。
すると葵は私の手をとって急に走り出した。
「ねぇ、、ね、ねぇ、、、、
ちょっと!」
「あ、あぁごめんごめん笑写真部の君には少し早すぎたかな?笑」
「うるさいなぁ。おかげで汗だくだよ。最悪。
んで、なんで海まで来たの?」
そう、葵は私を海まで連れてきた。
「夏を好きになってもらうため!」
パシャッ
「え、あっちょっともう、濡れたじゃん!」
「これが夏の楽しみ方だよ〜」
そう葵は何かを企む顔をして近づいてきた。
それからは水面の弾ける音が鳴っていた。

それから葵は私をこの島の山の神社に連れて行った。

そうして学校の宿題もしつつ、葵は夏の楽しみ方を毎日教えてくれた。

そんなある日、島で行われる1年に1度の夏祭りに誘われた。その祭りは、この島で伝えられている山神である珠雲(たまくも)様と呼ばれる神様に礼し、今後また1年、島を守ってくださいとお願いする行事である。

そして夏祭り当日。島全体が活気に満ちていて、毎年祭りのときは出店の手伝いばかりしていたから気づかなかったけれどいい景色だ。
そして、祭りの目玉である花火が上がる。
花火を見ながら葵は
「夏、楽しいでしょ?」
「うーん、悪くはないね。」

「明日から学校だね。葵も明日から本格的に友達作りできるじゃん。」
「そうだね、。」
「どうしたの?」
今思えばなんだか様子がおかしかった。


すると君は急に神社の方へ走り出していった。
何か用事でもあったのだろうか。また明日会えるかと思い、自分も家に帰ろうとしたとき、
「またいつか!」
祭りが終わり、ガヤガヤした声を一瞬で消して
ドロドロとした暑さを感じさせない、
元気さでそう言った。
いつかっていつなんだろうと思いつつ、
私は振り返って返事をした。
「うん、またいつか。$€々€<%。


_____あれ?$€々€<%って誰?」
返事をしたはずの私の声は、私が夏を好きになったきっかけだけを残して神社の方の山へ消えていった。

道端にはそっとキラングサとワスレナグサが夏の生ぬるい風に揺れていた。

7/22/2025, 3:47:31 PM