そういえば、ユートピアに来る人間は全員現実世界で適合できない、上手く生きられないと感じて『死んでしまいたい』なんて思った時にこの世界に来るんだったな、と思い出した。
目の前が真っ暗だった。何も見えず、ついでに何も聞こえない。
たまに起きる現象…………とはいえ、ユートピアに来てからなったのはこれでまだ二回目だった。
完治したわけではないけれど、ほぼ無くなったとしかいえなかったところから、急に症状が起こるとやっぱりパニックになるわけで。
目が覚めたのだから家にいるのは明確で、だから動かずにその場にいればいいというのに、どうしてか手探りで外に出て歩いてしまった。
おかげで今、どこにいるか全く分からない。
視覚、聴覚以外の感覚があるから、今へたりこんでしまっていることは分かる。このままじゃ、危ないかもしれないな、なんて本能が告げた時、声が聞こえた。
「…………者? …………力者?」
演奏者くんの声のような気がして、頑張って目を開けば、急激に明るい光が目に飛び込んでくる。
「……大丈夫かい!?」
慌てたような大きい声が耳に届く。恐る恐る彼の顔を見れば心配そうな顔を浮かべていた。
「……大丈夫、たまにある」
「たまにあるから大丈夫なわけないだろう」
怒ったような声だったけれど、心配してくれていたことが痛いほど分かって、申し訳ないと同時に少し嬉しかった。
9/23/2024, 12:43:56 AM