「自転車に乗って」
今年も親父の実家で盆休みだ。
残念ながらここにあるのは山と畑と田んぼぐらいで、娯楽らしいものはない。
子どもの頃こそいとこと山で遊んだり、古いゲームしたりするくらいで満足できてたけど、最近ではそのくらいじゃ楽しめない。しかも、遠いからって来なくなった親戚も少なくない。
つまり……めちゃくちゃ暇なんだ。
どうしたもんか。
思い切って山でも駆けずり回ってみるか。
いや、なんかもっとあるだろ……。
ふとリビングにいるばあちゃんの方を見ると、どうやら古い家から出てきた金庫を開けるテレビ番組を見ているようだった。
うちにはそういうのないの、と聞く前にばあちゃんが一言。
「うちにはそういうのないからね?」
そっか。
……というかそんなのがあったら多分みんながほっとかないよな。そうだよなー……。
俺の暇つぶし計画は振り出しに戻った。
やっぱり暇だなー。
この暑さにも関わらず、俺は暇すぎて庭をうろうろしてる。
どうしたもんかなー?ぶつぶつ言いながら物色中。
ふと、自転車が目についた。誰かが普段乗ってるからかそこまで状態は悪くない。隣にはデカいトラクターがある。
げっ、そうだった。どこかに出かけとかないとじいちゃんの畑仕事を手伝わなきゃならなくなるんだった!
……というわけで、俺は自転車に乗ってどこかに行くことにした。
「この自転車借りるから!」
「それじいちゃんのだよー?多分乗っていいと思うけど!」
親戚のおばちゃんの言葉を背に、自転車を漕ぎはじめる。
まだ朝だっていうのにめちゃくちゃ暑い。
でも、こういう時間にしか聞こえない鳥の声とか、ピカピカの虫なんかも見て、こいつら強えなとか考えてた。
そのうち下り坂に差し掛かる。
ぬるい風が俺の周りを吹き抜けていく。
うわー、夏だなー!
しばらくしたら隣町に出た。
少し都会だからなのか、あまりの暑さのせいなのか、もう鳥も虫もいない。
うわー、夏だな……。
俺は自転車を降りて、どこか涼めそうな場所を探した。
涼しそうなところ、アイスとか食えるところ……。
路地を見遣ると日陰で猫が溶けそうになってた。
猫ー、お前も大変そうだなー。
なんて思って見てたら怪訝そうな顔で逃げてった。
なんだよ。心配してただけなのに。
不貞腐れて適当に歩いてたらかき氷の店を見つけた。
「期間限定!レインボー白くま!」……ふーん。
「¥1,580」……見た目の割に値段は可愛くない。
まあせっかく来たからちょっとくらい贅沢してもいっか。
俺はレインボー白くまを注文した。
……美味い。けどいっきにかき込みすぎて頭痛が……。
これも夏の風物詩か。
にしても、かき氷なんか食べたの久しぶりだな。
それこそ10年は食べてない……かもしれん?
ボーッとしてから時計を見ると、夕方が近づいていることに気付いた。そろそろ戻らないと夕立ちが来るかもしれないな。
本当はもう少しだけ涼んでいたかったが、仕方がないのでかき氷屋を後にした。
今日は比較的充実した日だったな。
……お、さっきの猫じゃん。ちょっと涼しくなったけど、雨に濡れないように気をつけろよー。
それに応えるかの如く、猫はしっぽをちょいと振った。
夕方になりつつあるからか、ひぐらしの鳴き声が聞こえる。
なんだか切ない気持ちになるな。夏の終わりを感じさせられるというか……夏に思い入れなんかないはずなのに不思議だ。
上り坂の踏ん張りと下り坂の少し涼しい風を繰り返して家まで戻った。
あー、冷房のある部屋はいいな!
涼しくて楽だー!
……でもあれはあれで楽しかったな。
その夜はよく眠れたが、翌日足が筋肉痛に襲われたのは言うまでもない……。
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
……ここまで書いておいて何ですが、実は私、自転車に乗れないんですよね……。運動神経が悪悪(わるわる)すぎて……( ・᷄ὢ・᷅ )
早く自転車に乗れるようになりたーい!!!
8/15/2024, 1:21:40 PM