駒月

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「持たせたな!」
「ううん」

 部屋のドアを勢いよく開けた。
 新しい彼女は目を丸くして驚いたが、すぐに微笑む。優しい。
 仕事で遅くなった時も、嫌な顔をせずに俺を出迎えてくれる。ちなみに俺が彼女の家に転がりこんだ形で。
 つい先日、三回立て続けに失恋をしたばかりで凹んでいたところを彼女の笑顔に救われた。俺の人生は昔から失恋人生だ。くそ!

「お疲れ様。……息切れしてるけど、大丈夫?」
「どうって、こた、ねぇぜ……!」

 心配そうに覗きこむ彼女がかわいい。
 大丈夫と言うにはかなり無理があるが、これくらいは強がらせてほしい。
 無理しなく走って来なくてもいいのに、と笑われるが無理をしたい。マゾではないけど。

「君に会いたくて、走ってきたんだぜ」

 ウインクをすると、また彼女は笑う。

「両目、瞑っちゃってるよ」

 かっこつけて失敗した……俺はウインクができなかった。こっ恥ずかしくて頭を掻いた。


 



【君に会いたくて】

1/20/2024, 12:48:59 AM