‪スべてはキみのセい。

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『もしもタイムマシンがあったなら_。』


"後悔した。"

誰しもが経験したことがあるはずだ。

"願うならやり直したい。"

人は間違えることもある。何せ未来の事なんて分からないからだ。
予測はできても完全に知ることはできない。人々が未来の出来事を知れるならとっくに世界は滅んでいるだろう。もしくは、絶望し考えることを辞めるだろう。

"あの時、こうしていれば....。"

迫られる無数の選択肢が複雑に絡み合い交差して生まれる世界は何が起きるか完全には予測できない。

できるとするならば....タイムマシンで未来を見るか、過去に戻ってやり直すか、もしくは....。


人々の光と闇が複雑に絡み合うネオン街。
その騒がしい喧騒から隠れたコンクリートの森の中の一室には、一人の死人(しびと)がいた。

死人の顔前にあるのは一本の片道切符。

行先は誰も知らない。
死人は切符を眺め続けている。
どれほどの時間が経っているのか分からないが手についた跡を見れば分かるだろうか。
死人は切符を両の手で握っては離し、握っては離し、を今も繰り返していた。
死人と言えど未知への道は怖いのだ。

こんなことをする前の死人には夢があった。
たくさんのお金を稼ぎ、好きな人と結ばれ、子供たちに囲まれながら幸せに過ごすというありきたりな夢。

現実は違った。
付き合っていた好きな人には浮気され、並んでいた宝くじの目の前で大金を当てられ、知り合いのツテで入った会社にはボロ雑巾のようになるまで安い給料で扱われ精神を病んでしまい、終いには近くで犯罪が起きたらしく身なり格好が似ているからと犯罪者扱いされたのだ。

まともな精神なら無実無根であるので取り調べに応じ待てばいいのだ。
死人にはそんなことを考える余裕も無くひたすら逃げた。

そして、心身共に疲れ、片道切符に手を掛けていた。

"もしタイムマシンがあったのなら。"
浮気をしない素晴らしい人と結ばれていただろうか。
もう少し早く来てクジを買っていれば大金は死人が手にしていたのだろうか。
知り合いのツテに頼らず職を探し心を病むことも無く働けていただろうか。
病むことも無ければ間違われても逃げることもなかっただろう。
あの時も、あのときも...
これが夢だったなら....

そう考えていてる間に体の限界が来たのだろう。
死人はふらついた拍子に足台から落ちてしまった。
鋭い衝撃と共に意識は途切れた。


死人が気がついた時には朝だった。
ふと、隣を見れば幼なじみが生まれた時のような姿で寝ていた。
先程までの事は夢だったのか死人は深く思い出せない。
今思い出せるのはIT企業に就職し上司に気にいられ昇進した事。
幼なじみに告白をして卒業と同時に結婚し二人の子供と幸せに過ごしている事。
嫁が最近宝くじで大金を当て家族が大騒ぎした事。
どちらが夢だったか分からないが幸せな方がいいと思い至った。

実際、死人は頭を打ち付け昏睡状態である。
死人は夢の中で生人となったのだ。

夢は幸せへと連れていってくれるタイムマシン。

夢の中でならいくらでもやり直せる。
過去から未来まで行ける。

タイムマシンはいつも、あなたの中にあります。

それでは、また夢で会いましょう。

7/23/2023, 12:36:16 AM