君は、自転車に乗っていた。
馬鹿みたいに笑ってはしゃいで、
楽しくてしょうがなくて、
それでどこまでも君と走った。
疲れたあとの食事は何よりも美味しかった。
上り坂も下り坂も走ってきた。
———君が事故で亡くなるまで。
僕が君の墓へ向かおうとしたとき、
幻覚が見えた。君の姿だった。
半透明な君が、景色に溶けている。
これは幻なんかじゃない。
君は僕に目を合わせてはくれなかった。
それでも、君は間違いなく、そこにいた。
僕は、届かないを承知で呟いた。
「まだ旅から帰ってなかったんだね」
君は、自転車に乗っていた。
8/15/2023, 4:39:09 AM