母はまるで太陽のようなひとだった。
いつだって周りを明るく照らし、母自身が大変なときも笑顔を絶やさなかった。それ故、周りは人で溢れていたし、無条件に誰でも愛せて、時には相手の為に本気で叱ることも出来た人だった。
きっと母なりに悩みや挫折感もあったとは思うが子どもの私にはそれさえも光でとばしてしまってるくらい完璧な存在に見えてならなかった。
その子どもの私はというと、根暗で臆病で自信がない、自分なんて…が口癖のまるで真逆の存在だった。
歳を重ねるごとに私は顔立ちがどんどん母に似てきたので、母といると必ずと言っていいほど『お母さんにそっくりね』と言われてきた。
ぱっちりな目鼻立ちの母に似ているのは嬉しくもあったが同時に中身は全然似てないねと言われるのがセットだったので憂うつな言葉でもあったのだ。
まるで私は見せかけの太陽と言われている気分だった。あなたは太陽にはなれないとそう言われているように感じていた。
あの頃の私には太陽は眩しすぎた。
卑屈になればなるほどに私は太陽とはかけ離れていった。母とは心から向き合えない日々もあった。
それなのに、それでも太陽は私を優しく照らしてくれた。
…うん、やっぱり太陽には敵わなかった。
この先も太陽にはなれない私。私は落ちこぼれなのだろうか。
いや、きっと違うのだろう。太陽だけが星ではなく、それぞれの輝き方があってそれぞれの役割があるのだから。
それを教えてくれたのもまた母なのだ。
太陽なような母。太陽に成れぬ私。
あなたは太陽にならないでいいと教えてくれた母。
太陽のような。
2/22/2024, 2:08:03 PM