「涙の理由」
2024年10月11日午前8時30分
私の目からはふと涙がこぼれ落ちる。
中学2年生の春、あなたは私に告白した。声も手も見苦しいほどに震えていたけれど、私の目をしっかりと見て、心の底から愛していると伝えてくれた。涙脆かったあなたは私の返事を聞いた途端、泣き崩れていたね。そんなあなたに告白されたことが嬉しくて、私も少し泣いてしまった。
それからは毎日が幸せだった。あなたは優しくて、頼りがいがあって、でも少し不器用で、小心者で。そんなところが格好良かったし、可愛かった。中学3年生、高校受験に向けてお互い頑張ろうと言って始まった受験勉強。家に集まって、毎日向かい合って勉強をした。初めは良い関係を保てていたのに、受験が近づくほど私たちの仲は悪くなった。どちらが悪いなんて無い。お互いが緊張感を持ち、言うこと全てが頭にくる。そんな時期だった。
そんなある日、私たちは大喧嘩をした。きっかけは些細なものだったのに、お互いが日頃の不満を言い合って、歯止めが効かなくなった。本当は謝りたいのに、ダメだってわかっているのに。そんな状態で数日が過ぎた。もう家に集まることはやめて、口を聞くことも少なくなっていた。
その日は、1日中暴風と大雨で最悪な日だった。あなたは私に1週間ぶりに声をかけた。今までの喧嘩なんて嘘のように、悲しそうな顔をしていたけれど、私にはそんな彼に気づく余裕なんてなかった。何度も声をかけられて、振り払って、その日が終わった。
それからは本当に、彼とは疎遠になった。そうなってしまってから、私はやっと悲しいと思った。私たちはこのまま別れてしまうのだろうか、という不安が常に頭をよぎり、遠くから彼を目で追う日々が続いた。自分の幼稚さで彼に声をかけられないもどかしさに腹が立った。
2020年10月11日午前8時30分
朝の会。あなたのいない教室。担任から放たれる言葉に耳を疑う。
あなたは自殺した。
今日はあなたの死んだ日。私があなたを殺した日。
黒い服に身を包んで、花束を買って行こう。
10/10/2024, 10:58:34 PM