夏
夏の草原に銀河は高く歌う
胸に手を当てて風を感じる
ふと、頭の中に流れだすメロディ。
これは……そうだ、高校の合唱コンクールで歌った歌だ。
当時も理由はないけど気に入っていたフレーズ。
たまに込み上げてくる思いで立ち止まってしまいそうになる。
いったい、どうしてこんなにも……
思わず足を止めて目を瞑って考え込んだ次の瞬間。
瞼を開いた先に広がっていたのは、銀河だった。
一面に見える星々の光。
少し濡れた匂いのする草花。
草を揺らす風の音だけがする静寂。
ここは……どこだ。
という自分の考えに被さるようにして思い出す。
僕は知っている。
ここは那須高原だ。
小学5年生の時の塾の集中合宿の夜の景色だ。
そう、ぼくは2日目の夜に彼女と一緒に夜空を見に抜け出して……
彼女って誰だ。
「- -」
空から音が降りてきた。何か話しかけている、とは分かるけれどぼくはその音を声として認識することができなかった。
視線を上げる。
そこには空を埋め尽くす勢いで広がる光る円盤のようなものが。
「…ゎ…し…ぅ…に………なれた……ね…」
6/29/2023, 12:16:48 AM