別れ際に
「〜〜〜!!」
怒鳴られた。
完全な濡れ衣だった。
私は状況もよくわからぬまま、怒鳴られていた。
急に世界が色褪せた。
生きていてもいいことなんてないような気がした。
なんだかどうでも良くなって、
部屋から飛び出した。
「おい、待て!!」
私は声を無視して走り、窓から飛び降りた。
ここは四階。
下はコンクリート。
頭から落ちれば助からないだろう。
身体が宙に投げ出された。
人が、窓から何か言ってる。
夕暮れ時のことだった。
全ての動きがスローモーション。
思い出が蘇る。
これが、走馬灯。
もう、地面が近い。
幸福感に満ちていた。
…………でも。
世界との、私との、別れ際に考えたことは
「まだ、死にたくない。」だった。
夕日は、綺麗だった。
思わず体を起こした。
……あれ?
ちゃんと、生きていた。
よかった。ほっとした。
全ては夢だった。
あの建物は知らないし、
怒鳴った人も知らない。
死にたいわけでもないし、
そもそもそんな勇気がない。
私はまだバクバクしている心臓の鼓動を感じながら、
着替え始めた。
9/28/2024, 12:44:20 PM