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「ねぇ、」

いつものように柔らかな声色で――なのに困ったような顔をして――話しかけてくれた君をそっと抱きしめる。

この瞳を閉じれば僕は現実に帰ってしまう。
次にいつ夢の世界に戻れるかは分からないから、夢の世界に入れたとしても君に会えるかは分からないから。

温もりのない君の身体に、僕の体温が少しでも移ってほしい。
この時を思い出して、僕に会いたいと願ってほしい。

そんな自分勝手な願いを込めて、僕は君に伝えるのだ。

「また会いたい、きっと会いに来るから」


『夢が醒める前に』

3/21/2024, 4:53:30 AM