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好きな本と言われて真っ先に思いつくのは、「精霊の守り人」だ。初めて読んだのは、小学校高学年だったか、中学生だったか。ハードカバーで、表紙には巻き絵か壁画のような味のあるタッチで、神話のような絵が描かれていた(最近売っている文庫版は、もっと爽やかで洗練されたイラストになっている)。「精霊の守り人」は長く続く「守り人シリーズ」の第一作で、ジャンルとしてはおそらく和風(?)ファンタジー小説ということになる。初めて読んだときは本当に衝撃的だった。本のなかに、これまで全く見たことも聞いたこともない新しい世界が、とんでもないリアリティをもって存在している。本のなかにまるまるひとつ世界が入ってる、しかもそれが、すでになんとなく知れ渡っている「中世ヨーロッパっぽい剣と魔法の世界」とか「平安時代の日本っぽい和風の世界」とかではなく、まったく新しく全てをイチから築き上げたオリジナルの世界だ。作者は文化人類学の専門家で、オーストラリアの先住民族であるアボリジニを研究していたらしい。文化人類学の視点から現実世界を深く観察した後に、そこに見出したものをファンタジー世界に再現し、物語の形でしか伝えられないものを伝えようとしてくれているのだと思う。

6/15/2024, 2:11:27 PM