夜明け前の薄明時刻。
東の空から新たな光が供給されて、暗き黒の領域の一部が濃紺になってきている。
浮かんでいた小さな雲の存在が目立つようになって、夜が明けてくることを空が自覚する。
深夜のコンビニで、「夜明け前」という酒を買ってきた。
名前の通り、これは夜明け前に飲むのがいいと思って寝ずの番をしていたが、バカなことをした。
名前の通りなことをせず、安酒の通りにすればよかった。けれど、その後悔の記憶は、真上で展開される夜のよろけ具合を見ると、どうでも良くなってしまった。
磨かれたグラスに「夜明け前」を注ぐ。
日本酒の香り高い空気と共に、吸う。
鼻から鼻腔を通り、喉の細胞で香りを味わう。鼻の中を通る淡い香り。
一口味わうように飲むと、山田錦の澄んだ深みを感じて、空を見上げた。
夜明け前から夜明けに推移した、明るい青が見えた。
9/14/2024, 9:35:11 AM