苑羽

Open App

「心臓蘇生は希望されますか」
「いいえ…」
「いいんですか?」
「ええ、もういいんです。今のままのように寝たきりなら、生き延びても母も私も辛いだけだわ」
子供の頃の私は、母の言っていることがてんでわからなかった。入院している祖母に何かあったとき、生き延びられる方法を、母は諦めたのだ。祖母は死んでもいいということか?自分の母親なのに。そう思っていた。

人は死んだら、お星様になる。
そうして、大切な人をいつまでも見守っている…。
こんな話を、きっと一度は聞いたはずだ。

今になって、やっと分かった。
あのとき、母が祖母を無理矢理この世に引き留めなかった理由。
ベットの上なんかじゃなくて、お空で、昔のように生き生きと、私たちを見守ってて欲しかったんだね。
分かったよ、私。もうあの時の子供じゃないよ。
だから戻ってきてよ。
綺麗な星空は、あんなにも遠い。
我儘でごめん。でもね、私はお母さんに、隣にいて欲しかったんだよ。
「星空」

7/6/2023, 8:10:25 AM