『見つめられると』 月が見ている。 僕を見ている。 明々とした真円が、雲ひとつない空から、青白い光の視線を放って。 どんな悪事も善行も、月はただただ見つめている。 サラサラと降る月明かりが、すべてを等しく照らし出して。 その心の内さえも見通す透明な光が、僕を捉えていた。 得体の知れない不安が胸を苛む。 月に見つめられると、いつもこうだ。 月光の描いた影法師を見つめたまま、僕はぬばたまの夜の闇を、待っている。
3/29/2023, 4:25:17 AM