大狗 福徠

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君と
私より幼くて、小さい体が私を引いて行く。
君の顔は見えなかったけど、その背中は自信に満ち溢れていて。
この子なら大丈夫って、この子ならって、私も君を信じた。
私も、君みたいに信じる私を信じてみたの。
君は何処へだって行けると信じたから、私はその背をついて行った。
決して道を違えぬように、迷わぬように。
でも道を違えることはなかった。
君は真っ直ぐな子だったから。
君は前を見ている。
その足で前へ進む。
見守るしかできない私でさえ当てられて自信を持つほどに。
大きくなってもそれは変わらない。
後ろを遠慮がちに振り返ることはなくなった。
私に与えてくれた温かさだけが変わらない。

私はもう一緒には歩けない。
君と私じゃ生きられる時間が違いすぎたみたいで。
ゆっくりとその場に伏せる。
君はすぐに私が伏せたことに気づいてくれたけど、
同時にどうしようもないことにも気づいたみたいだった。
その手を舐める。
君は人で、私は犬。
君を置いていくのは嫌だったけど、
もう私の足は、尻尾は、目は、体は、心臓は動けない。
残りの力を振り絞って、君の目を見る。
涙だろうか、雫が私の頬へと落ちる。
たくさん君と歩けて楽しかったよ。
いつも一緒にご飯を食べられて嬉しかったよ。
ボール遊びも引っ張り合いっこも面白くって。
君の笑顔がいつでもそばにあるのが幸せで。
しあわせにしてくれてありがとう。
君としあわせにしてくれてありがとう。
ばいばい

4/4/2025, 4:11:04 AM