織川ゑトウ

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『愛終(あいしゅう)』

何を思ったのだろうか。
僕は君を閉じ込めて、
君は僕を置いてった。

あんなに好きだと言っていたのに。
僕が何を言っても響かず、君の目からは哀惜が感じられた。
窓から入る光は黒く、淀んでいた。

昔、夏祭りの時だったかな。
僕が君に告白をしたら泣きながら
「好きだよ。でも、居なくならないでね」って言ってくれたよね。
あの後食べたりんご飴は美味しかったよね。
それ以外にも、沢山、たっくさん、覚えてるんだ。
君の後ろ姿をいつも追いかけていたよ。

嗚呼、なんで、なんで、こうなってしまったの。
貴方の寝床に花を手向ける。
居なくならないでね。って言ったじゃない。
なんで、貴方も居なくなるのよ。
暗い部屋、何も見えない。あるのは貴方とのツーショットだけ。
私が自殺したら、貴方も一緒に死んじゃって。
ふざけないでよ。
死んだ後に神様から言われた。
「君は未練があるから、そこに残っててね」って
私一人だけ、貴方と住んでた部屋でずっと。寂しいよ。
私はまだ貴方に囚われ続けている。
一緒に行くなら天国だね。って言ったのに……
ごめん。ごめんね。

大丈夫だよ、心配しないで。
それにあれは事故だったんだから、仕方ない。
それに、君が死んだ理由ももうこの世界に二人だけだったからでしょう?
辛かったんだよね。家族が死んで。
こんなこと言うものじゃないけれど、
世界で二人だけだったって知ったとき、僕は過去最高に喜んだよ。
でも、君は濁った目で僕を見つめていたね。
君のその目が恋しくて、もう一度あの頃に戻りたいと思ってしまう。

まぁ、もう何回も繰り返してるんだけどね。
さぁ、今度は君をどんな風に愛そうかな。


お題『世界の終わりに君と』
※哀惜(あいせき)=人の死など、帰らないものを悲しみ惜しむこと。



6/7/2023, 1:06:39 PM