僕にはこれまでの生涯の中で
最も大切にしている手紙がある
それは大学時代の友人が
卒業式の後にそっと渡してくれたものだ
彼女とは空いたコマの時間に
よく図書室で勉強をした
彼女は頻繁に授業中居眠りをしていたため
よく僕のノートを見せていた
当時の無知で愚鈍な僕は
彼女のそれが体質的なものである事に気付けなかった
なんとも言えない蟠りを胸に抱えたままで
彼女に気を遣わせてしまった
そんな僕の内情を知ってか知らぬか
彼女は手紙の中で僕に謝罪と感謝の言葉を述べていた
そして「あなたは特別な人です きっと有名になります」
とまるで予言のように書かれていた
僕は自分を強く恥じた
結局僕は有名でもなんでもない
凡人として生きてしまっているが
時折彼女のくれた言葉の意味を考える
僕は何をすれば彼女の予言に、いや期待に
応えることができるのだろうと
模索しながら、どこか足掻くような気持ちのまま
これからも生きていくのだろうと思う
彼女は僕に手紙を渡してくれた後、
突然連絡がとれなくなってしまった
彼女は今何をしているのだろうと
胸にしまった言葉を撫でる度に考える
2/26/2023, 5:00:29 PM