霜月 朔(創作)

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胸の鼓動



私は貴方の身体に、
ナイフを突き立てました。

貴方が憎いからではありません。
こんな醜い世の中に、
雁字搦めになって、
苦しんでいる貴方を、
救いたかったからです。

貴方の身体からは、
赤い血が止め処無く流れ、
貴方の胸の鼓動は、
次第に弱くなっていきます。

誰よりも大切な貴方に、
私が永遠の安らぎをあげます。
だから…。

…お休みなさい。愛しい貴方。



私は瀕死の君に、
必死に蘇生措置を試みる。

眼の前の君は、大量に出血し、
呼吸も心拍も止まっている。
君が助かる見込みは、
限りなく低いだろう。

君を死なせるものか、と、
私は力の限り、
君をこの世に留めようとする。
どんなに辛くて苦しくても、
君には、生きていて欲しいんだ。

圧迫止血をし、
心臓マッサージを繰り返す。
君の胸の鼓動が、そして呼吸が、
弱々しくも戻ってきた。

誰よりも大切な君に、
私が生きる喜びを教えてあげる。
だから…。

…お帰り。愛しい君。

9/8/2024, 6:55:56 PM