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「誰だったかは覚えてないけど、昔の本にな、面白いことが書いてあったんだ」

彼は煙管をふかしながら、ポツリとそう呟いた。私は酒の入った瓶を傾けるのを辞め、彼の続きを促すように求めた。

「なんだ、面白いことって」

「とある恋仲の男女が別れる時、女は男に呪いをかけるそうだ。どんな呪いだと思う?」

こいつ、こんなスピリチュアルなこと信用するやつだったかと不思議に思ったが、面白いことだと豪語するのであれば、まぁそうなのだろう。ただ、私にそういった知識はないため、皆目見当もつかない。

「全くわからんな。一体何をするというのだ?」

「花だよ、花。花の名前を覚えさせるんだ。」

「…なぜ花の名前を?」

「その花を見る度に教えて貰った女のことを思い出すだろう?男はそれで一生苦しむんだ。」

なるほど、とは思ったが、昔の女のことなど忘れたいものだろう。私ならば、速攻で忘れるものだが、世の男の気持ちは何も分からない。惚れた弱みと言うやつなのだろう。私はその場で、酒を一気に呷る。

2/25/2025, 1:42:06 PM