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月夜。
この寒い時期に訪れるふとした温かさ。その一瞬から叩き出された瞬間の満月は、刺すように輝いていた。
毎日続く仕事に、学校に、休日に、現実。あと少しの辛抱さえ難しいと思えるほど、切羽詰まっている今日は、後どのくらいで終わるだろう。早く家に帰って、布団をかぶり、一人だけの世界で自分を隠したいと、本当に毎日考えている。
分かっている。明日は、久しぶりに会う友達とのデートだし、前から興味のあった小旅行、普段行かない図書館に行ったり、気持ちよく晴れた空とのピクニックが待っている。そんな明るく楽しげで満ち足りるような明日に、なんの感情も揺さぶられなくなったのは、いつからだろうか。
僕の壁掛けカレンダーは空っぽだ。誰かとの予定なんて、向こうから自ずとやって来る事は、まず無い。それでも良いはずなのだ。
寒々とした思考を巡らせては打ち消して、打ち消しきれずに打ち砕かれる。このふとした時間につい、寒さを求めて窓を開けてしまう。
月は綺麗だ。雲などない、カンペキな満月。
ただ、今はただ、そこにいる事に嫉妬する。

3/7/2024, 2:44:57 PM