彩士

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僕が普通じゃなくても愛してくれますか?
みんなと同じことができなくても、同じみんなと同じ愛情を持って接してくれますか?
僕は生まれながらにして、翼は持っていても飛ぶことができない天使だった。
真っ白な羽、柔らかな羽、肩甲骨の辺りからひょっこりと生えている。
僕のお母さんもお父さんもお姉ちゃんもお兄ちゃんもみんな持っている翼。
僕も持っているけれど、みんなと違うのは飛べないということ。
よく分からないけれど、天使のお医者さんのところに連れて行かれて、翼としての役割をコレは果たせないんだって。
稀にある病気の一種なんだって。
僕は意味もなくある、ただ飾りのコレと一生付き合わなくてはいけないらしい。
と言っても、生まれた時からこうだからみんなの可哀想とか辛かったね、とかっていう声かけは特に僕の心になんの影響ももたらさない。
だって僕にとってはコレが普通だから。

学校に行く歳になった。
僕は他の使える翼がある子とは違うクラスなんだって。
空を飛んで移動しないといけない授業とか、内容に僕は一緒に行動できないから、特別な学級に行くらしい。
それはごもっともなことで、他の子に置いて行かれて悲しい目に合うよりかは、僕と同じような境遇の子達と頑張って授業を受けることの方が良かった。
僕みたいに翼が使えない子や、翼がない子、片方しかない子、それから頭の上の輪がない子とか、いわゆる普通を持っていない子が僕と同じクラスになった。
それぞれができることは違うし、たしかに他の子とはなんか違うなって子達が集まっている。
でも、得意なこともあって、絵がものすごく上手だったり集中力がすごかったり、特定の知識だけはたくさん詰まってたりする特別な子たちばっかりだ。
担任の先生とは別に補助の先生もいていろいろ良くしてくれてる。
でもね、僕知ってるんだ。
百パーセントの愛で接してくれている訳ではないこと。百パーセントの善意で見てくれていないこと。
先生は言うんだ。あの子はああだったら、いいのに。とか、せめて〇〇はできないと生きていけないのに、とか。相手が面倒くさいとか。そりゃあね、場所を歩いて移動するしかないから、高いところに行くには連れて行ってもらわないといけないし、片方の翼しかない子はバランスが取れないから、体を支えてもらう必要があるし、頭の輪っかがない子は、頭の回転がちょっと遅いから受け答えがうまくできない時もある。
僕の世界では、普通じゃないことが見た目で分かってしまう。僕が外に出かけたらね、知らない人は顔を顰めるの。きっと僕が変な行動をしたり人に迷惑をかけたりすると思ってるんだ。迷惑はかけるかもしれないけど、顔を顰めなくていいのに。
僕はちょっと傷ついてしまうんだ。こんなこと慣れてるはずなのにね。

なんかね、2学期から学校の制度が変わって僕みたいな立場の子も普通学級に行かなくちゃいけなくなったの。
まあ、僕はそのままの学級なんだけど。
頭に輪っかがない子が普通のクラスに行くことになった。その子のお母さんは、他の子と違うってことが、ものすごく今まで嫌だったみたい。だから、その知らせを聞いてすごく喜んでた。
私の子は、普通なのよって。
不思議だね。クラスが違うだけでその子のお母さんは胸を張って自分の子の存在を人にいうことができるんだ。
おかしいよ。
でもね、数ヶ月経ってその子は学校に来なくなっちゃった。授業に追いつけないんだって。
今まで僕たちとやってたペースはゆっくりだったから、授業のスピードに追いつけなくなっちゃったって。
そりゃそーだよ。
なんで、僕たちにあったクラスに行ったら行けないのさ。僕は先生に聞いてみたんだ。
そしたらね、学校のボスの市役所ってところからの命令なんだって。
僕たちみたいにちょっと正常じゃない子がたくさんいて大変だから、その人数を減らすために基準をあげたんだって。意味が分からないよ。
授業に追いつかなくてもいいから教室にいるだけでいいよ、ってなんの意味があるの?
僕はまだこのクラスにいられる。
でも、授業の言ってる意味も分からない、友達もできない。教育の放棄だよね。

天使は天使っていう型にはまった見た目じゃないと、普通の子と同じものをくれないの?
恥ずかしいとか、可哀想とか、なんでそう思うの?
あーあ、なんて簡単で難しい問題なんだろう。

11/12/2023, 1:26:14 PM