特盛りごはん

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「本日も有意義な会議にしよう!意見のある者はどんどん手を挙げてくれ!」

 意気揚々とした男の呼び掛けとは裏腹に場の空気は重い。真っ白な空間に設けられた円卓に集った面々は皆一様に呆れた顔をしていた。

「どうしたお前ら。やる気を出せよ」

 いつもなら全員とまではいかずともぱらぱらと意見が出される筈が、今日は誰一人として手を挙げる様子がない。
 何でもいい、一言でもいい、議題を変えてもいい。譲歩する男の言葉は届いている筈なのに、やはり誰一人として手を挙げることは勿論雑談さえも起こらなかった。

「もう知らん!」

 怒ったようにも泣きそうなようにも見える顔で乱暴に席を立ち退席して行った男を見送って、残った誰かがぽつりと呟いた

「……帰っちまったけどいいのか?」

 それに誰かが欠伸混じりに返す。

「いいんだよ。どれだけ議論を交わそうがどれほど良い意見が出ようが、どうせ」

 ──起きたら覚えちゃいないんだから。
 男の意識が覚醒するのに合わせて、その言葉を最後に真っ白な空間は男の意識の深層に消えていった。



/目が覚めると

7/10/2023, 12:49:31 PM