saku

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ショッピングモールで歩き疲れたので、通路のベンチに座った。
ほとんど同時に、造り物の観葉植物を挟んだ背中合わせのベンチにも、お母さんと中学生くらいの女の子が座った。
何の気なしに二人の会話が耳に入ってくる。

「ママね、今朝起きた時、寒くて寒くてついに風邪引いちゃったかもってドキドキしたの。」
「へえ…」
「で、さっきあなたのお洋服見てる時、急に思い出したのね。
昨日、おばあちゃんと電話したじゃない?ママ、寝る前急に寂しくなっちゃってね。さっきそれを思い出したの。あっ!って。ああそれで、起きた時すごく寒かったんだって。」
「……寂しいと寒いの?」
「そうみたいね〜。でももうママ、風邪引かなかった。ゾクゾクッとしただけ。ただそれだけだったわ。」
「…そっか。ママ、えらい。」
「あら、あなたもえらいわよ!ウフフフ!」

どんな様子の人達か見たくて、私はさり気なく振り返った。
再び同じタイミングで二人は立ち上がり、人波に紛れていく後ろ姿と、娘さんが抱えていた紙袋の「MUJI」の文字がちらっと見えた。

なんだか妙に心に残った母娘の会話。

10/10/2023, 4:03:07 PM