『澄んだ瞳』
疑う事を知らない真っ直ぐな心を持った君は誰よりも澄んだ瞳を持っていて。
その瞳を、穢れなき君を人知れず俺は守ってきた。
君を穢そうとする者から。
惑わせ誘惑しようとする者から。
その美しい瞳が汚れてしまわないよう大事に、大事に守り続ける俺の心の中にもう一人の人格がいる。
誰よりも君を穢したいオレ。
澄んだ瞳を情欲に濡れた熱で揺らしてしまいたいと。
常にせめぎ合う俺とオレ。
今まで勝っていたのは俺だけれど、君が成長し大人びていく度にもう一人の存在が強くなっていくのがわかる。
君を守るのは俺だ。
キミを穢すのはオレだけだ。
誰にも穢させない。
誰にも渡さない。
君は
キミは
俺だけのものだ。
オレだけのものだ。
重なり合う二つの心。
パァンと何かが弾け飛んだ。それが何かもわからぬまま重い瞼をゆっくり開くと窓から差し込む月明かりが己を照らしだした。
綺麗だな、月を眺め呟くと口端を軽く釣り上げてベットから起き上がり部屋を後にして彼女の家へ向かった。
満月が綺麗な夜更け、相変わらず不用心なのか忘れたのか、鍵の掛かっていない窓から彼女の部屋へと静かに侵入する。
今宵キミの全てをオレのものとする為に。
7/30/2022, 12:05:29 PM