【逃れられない呪縛】
あいつとはもう何年も会っていない。
あの日の喧嘩を境に会わなくなった。
きっかけはほんの些細なことであった。
あまりにも些細なことで、思い出すことも難しいほどであった。
だが、私にも覚えていることがある。あの日、あいつに投げつけた言葉を。
「絶交」
あの日、この言葉を投げつけられたあいつの顔を。
しまったと思った。
しかし、その時の私は興奮していた。
素直になれなかった。
そこで謝っていたのならどうなっていたのだろう。
今でも時々思う。
今から謝っても許してもらえると、心のどこかで思っている。あいつのことだ、そんなこと忘れてるかもしれない。
だけど、私はあいつを前にしたら何も言えないだろう。
ごめんなさい。この言葉を言おうとする度、「絶交」が脳裏をよぎる。
「絶交」という言葉から逃げられず、この言葉に縛られているのだ。
5/23/2023, 10:59:40 PM