たーくん。

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いつまで経っても、赤から変わらない横断歩道の信号。
他の皆の信号は青になっていて、横断歩道を渡っている。
試しに一歩踏み出してみると、車にクラクションを鳴らされた。
一歩下がり、元の位置へ戻る。
……私は、これからどういう人生を歩んでいこうか悩んでいた。
今まで適当に生き過ぎて、多分、危険を感じた心の信号が私を止めたのだろう。
友達に相談しようとしたが、私の相手をしている暇がないのか、早足で横断歩道を渡っていってしまった。
誰か……相談に乗ってくれる人は……。
赤信号の前で呆然としていると、鞄の中から着信音が鳴った。
鞄からスマホを取り出す。
着信相手は……母さんからだ。
「もしもし?悩み事があるんでしょ?一人で悩んでないで、家に帰っておいで。相談に乗ってあげるから」
母さんの優しい声を聞いて、涙腺が緩む。
「お父さんも待ってるぞー」
父さんの声を聞いたら、涙が引っ込んだ。
「母さん、ついでに父さんもありがとう。今から帰るね」
私は赤信号に背を向け、実家へ向かって歩く。
次はきっと、この赤信号は青信号に変わっていると思う。
だって私には、家族という強い味方がいるから。

9/5/2025, 11:00:41 PM