いちましろう

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もう何年も泣くことが無かったので、はじめ涙だとわからなかった。涙とわかって驚いた。呆然と。まじまじと。何か夢でも見ていたのだろうが、夢を見ていた記憶すらなく、数年分の現実の上では自分の身に起こらなかった何かに夢の中でおもいきり揺さぶられたのであろうことに軽く感動した。しかし朝に涙は不釣り合いのように思えたし、いつまでもこうしている暇はなかったので、直ちに洗面所に向かって普段通りに顔を洗った。鏡に飛沫がはねたのをそのままに、今日の支度を優先した。

7/10/2021, 4:08:03 PM