大狗 福徠

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全身が湧き立つ。
皮膚を内側から撫でられるような、
神経を舐られれているような気の遠くなる感覚がする。
強い前後不覚に襲われる。
立っているのがやっとなほどだった。
化け物と対峙している。
そう錯覚した。
目の前にいるのは間違いなく人間なはずだ。
一切として話が通じないことを除いて。
あまりにも当然のように気の狂った言葉を発するものだから、
俺が異常なのかと疑うほどだった。
目の前にいるのは祖母、だと思いたかった人。
今も不機嫌そうに母への暴言をたれている。
その子供である俺の前で。
今までは認知症でおかしなことを言っているのだと思っていた。
そうであれと願っていたのかもしれないが、
そんな期待は打ち破られた。
到底人間だと思えなかった。
目の前のそれは完全に化け物だ。
殺してしまおうと思った。
関わりたくないと思った。
黙らせようと思った。
近づきたくないと思った。
結局それはひとしきりゴミに近づく行為をした後消えていった。
それから毎朝、起きるたびに心がざわめく。
あの化け物がいよいよ死んでくれやしないかと。

3/15/2025, 10:42:08 AM