NoName

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母の古いアルバムに、1枚の写真が今も隠されている。母が持っているアルバムは、その1冊だけ。いろいろあって、1冊のみ。
その1冊のアルバムの中の、母の写真の下に、1枚の写真が隠されている。

男の人。
写真の裏に名前も書いてある。

その写真を見つけたのは、わたしが中学生の頃だった。1枚だけ厚みが違うと感じたわたしは、母の写真を剥がしたところ、その男の人の写真を見つけた。

母をからかいながら、いろいろしつこく尋ねた。母は言いたがらなかったけど、自分より年下で一緒に勉強をしていた相手だった…と。

「キスとかしたの?」って、聞くと、
「そんなことしない」って、言った。

母は中学生の頃からだんだん視力が衰えて、盲学校へ入らされた。盲学校へ入るしかない、と、諦めるまで何年かかかったらしい。だから、手紙のやりとりなどはできなかったと思う。盲学校で出会った人だった事は確かだと思う。

写真は誰が撮ったものなのだろう。男の人が誰かに頼んで撮ってもらって、母がもらったものなのかもしれない。特別な、母のために。

手ぐらい繋いだのかな。
好きだって、告白したのかな、されたのかな。

その辺は聞けなかったけど、とにかく母にとって特別な人だった事は間違いない。

アルバムのどの写真も色あせているのに、その特別な写真だけは、綺麗な白黒のままで。

わたしは元の通り母の写真の下に差し込んだから、今も色あせてないはず。

なんにも触れられずに色褪せないままの思い出…………

いいなぁ…………


母の心の中の、その人も、きっとあの時のときめきのままなんだろうな………


2025/02/02
隠された手紙、

今日は、しんみり。

2/2/2025, 11:15:25 AM