『雨に佇む』 No.125
雨が、降ってる。
小さな洗面所の丸窓に、雫が滴る。
とたとた、ぽろぽろと屋根に大粒の雫が落ちる音が、耳を澄ませばあちこちから響いてくる。
気付けば、玄関のドアを押していた。
体に濁った雨が染みていく。
あぁ、…
このまま流れて消えてしまいたい
薄く濁り曇った景色にまみれて
自分も薄れていきたい
止まらない涙と
ぐちゃぐちゃのこころ
助けて、助けて
こんなに苦しいの
雨の中叫んでも、涙が溢れても
灰色の世界は静かなまま
透ける肌と
生々した感覚
鼻につんと染みるあの匂い
体を通り落ちる雫
不安定な土に数え切れない雨音が叩きつけられる
湿った辺りは薄灰に濁り
霧をやさしく纏う
ぽたぽた
ぴちゃ
ころころ
顔が熱い
目が曇る
気づけば雨が止まっていた
肌寒い感じが僅かに、残る。
なにしてるんだろ、ってわらえる。
肩にはまだ、雨が去った事が物語られる
無数の水のシミができていた
8/27/2023, 10:24:46 AM