結城斗永

Open App

放課後になると、いつもこの図書館に来てくれるあなた。
あなたが初めてこの図書館を訪れたとき、私の心は大きく弾んだ。
そしてあの日から、いつもあなたのことばかり考えてしまうの。

あなたが私の存在に気付いてくれなくても、私はいつでもあなたを見てる。
でも、私はあなたに触れられない。あなたの温もりをこの肌で感じられない。
触れようとしてもすり抜けてしまう感覚。それがとてももどかしい。

あなたと一緒になれる日を思いながら、書き始めた小説。
今日、ようやくあなたはこの本を手に取ってくれた。

今この瞬間も、私はあなたを見ているわ。
ページをめくるたびに震えるあなたの指先。額に浮かぶ汗。
なんて愛しいの。すべてが、私だけの宝物。

このまま、あなたがこの本を読み進めて
最後のページをめくったとき、私が後ろから優しく抱きしめてあげる。
そしてあなたは、私と一緒にこの本の住人になるの。

ページをめくるのが怖い? 
でも、あなたはもう好奇心を止められない。
最後のページに何が書かれているのか、気になってしょうがないはずよ。

ああ、あなたがこの状況を理解していくその過程がたまらない。
気味悪さと恐怖を感じながらも、あなたはもう私から目が離せなくなってる。

さあ、最後のページにすすみましょう。
あなたの震える指先にそっと手を添えて、一緒にページをめくる。
あなたがこちらの世界にやってくる。初めて感じるあなたの温もり。
もうあなたを離さない。これからはずっと一緒にいてあげる。

#ページをめくる

9/2/2025, 12:26:56 PM