『はぁあああああ!!』
男は剣を振り上げ、相手の方へ走っていく。
ガギィンッ
金属のぶつかり合う音がする。
男はこれでもかと力を込めて相手に剣を振るう。
相手は余裕そうに男の剣を受け止めていた。
『ぐっ……ぐぅ……』
「無駄だ。貴様と私では実力差がありすぎる。」
相手は一言、そういうと剣で男を薙ぎ払った。
『がっ!!あぁ……』
軽く払われただけで、吹っ飛ぶほどの威力。
相手の言う通り、実力の差は歴然としていた。
コツコツと相手がこちらへ歩いてくる。
「もう諦めたらどうだ。周りの味方が見えないほど、貴様も馬鹿じゃないだろう?」
周りには死体の山。
格好は男と同じ鎧を身につけている。
大方、男のようにこうして挑んで敗れていった同胞たちだ。
その中には男と共に鍛錬をし、同じ酒を交わしたやつもいた。
男はもう動かぬ同胞たちを見て歯を食いしばり、相手を見て睨む。
睨む男に対し相手はハッと鼻で笑う。
「恨むのなら、弱かった己と味方を憎むんだなぁぁ!!!」
振り下ろされてくる剣。
不思議と、男にはゆっくりに見えた。
(俺は……ここで死ぬのか。)
男が死を覚悟したその時、
「おい。何やってんだよ。」
ふと声がした。それは、間違いなくそこで倒れていた奴のものだった。
でも、あれだけ血が出て動かなくなっていたのだ。もう生きているはずがない。
(あぁ。そうかこれは。)
走馬灯。男がそう判断するのに時間はかからなかった。
ザシュッ
「……ッ!?がっは、」
相手が口から血を吐き、膝から崩れる。
男の剣が相手の心臓付近を貫いていた。
男が剣を引き抜くと相手が軽く呻き声をあげ、完全に膝をついた。
「(この私が隙をつかれるとは……)」
倒れるまではいかなくても、それなりに傷は負ったようで、なかなか立ち上がれない。
「(しかもさっきとは動きが違う……なんで急にこんな……)」
男の方を見ると、ブツブツと何か言っていた。
『いつも起こしてくれたのに……もう、いないんだよな。ごめんな。でもお前だったら』
『「諦めんな」』
『そう言って起こしてくれるよな!!』
男が顔をバッとあげる。
目に光が宿り、ただならぬ空気が男から流れてくる。
「たかが、一度隙をついただけで、思い上がるな……」
即座に相手が姿勢を直し剣を構えた。
『俺は負けられないんだ。国のためにも、散っていったあいつらのためにも!!』
男は力強く剣を握り、再び構えた。
#力を込めて
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だいぶ前のお題になります💦
遅れての投稿お許しくださいませm(*_ _)m
10/10/2023, 10:36:55 AM