川柳えむ

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 カーテンの隙間から射し込む、朝のやわらかな光で目が覚めた。
 ぼんやりした頭で横を向くと、肩に君の頭がもたれかかっていた。
 あぁ、そうか。
 昨夜は君と二人で飲んで、ソファに座ったまま気付かぬうちに寝てしまったのか。

 週末の仕事帰り。「明日休みだし、今からうちで飲もーよ!」と、こちらのことをなんとも思ってないからこそ、気軽に誘ってくる君。
 おいおい、一応俺だって男なんだ。襲われたって文句は言えないぞ。とは思うものの、君のことを大切に想っているから、絶対にそんなことはしないのだが。そして君も、そんなことはしないって俺を信頼してくれているからこそ、こうして誘ってくれているのだろうが。
 それが、嬉しくて、でも、少し寂しい。
 そうして結局二人で君の家で飲んで、こうして何事もなく平和に朝を迎えたのだ。

 君はまだ眠っている。幸せそうな顔をして、一体どんな夢を見ているのだろう。
 この射し込んでくるやわらかな光のような、明るく、そして優しく俺を照らす君の存在。
 もたれかかる右側の温もりが心地良くて、まだしばらくこのままの関係でいいかと、俺もまた幸せな気持ちで再び目を閉じた。


『やわらかな光』

10/16/2023, 8:34:02 PM