かんらんしゃ

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 わたしの世界は狭い。
 ある部屋の、かわいい小部屋に住んでいるわたしは、この世界の大きさを知らない。ちっちゃな窓から見えるのは、黄色いカバーがかかった真っ赤なランドセルだけ。
 そんなわたしでも、広い世界が見られる日がある。その日はいつも、温かい手がわたしを知らない世界に連れていってくれるんだ。
「はむりん、おいで」
 小さな手が優しくわたしを包み込む。今日は冒険に出られるかもしれない。
「今日はいつもよりふわふわだね。かわいい」
 わたしがコロンと転がると、彼女は微笑みを浮かべた。ああ、なんてかわいいんだ。
「今日は雨降ってるから、お外はまた明日ね」
 そう言って彼女はわたしをいつもの小部屋に入れた。微かな足音が遠ざかっていくのがわかる。なーんだ、つまんないの。
 いいもん、わたしはこの部屋の片隅で精一杯遊ぶんだから。わたしの小部屋にも、トンネルにパイプ、回し車だってあるんだもの……!
 ザック、ザック、カランカラン、ザック、ザック
「ふふ、楽しそうね」
 声がして顔を上げると、彼女が笑顔で立っていた。驚きで足がもつれる。
「はい、プレゼント。今日誕生日だもんね」
 空から降ってきたのは、ひまわりのしずく。
 やっぱり、どんなに部屋が小さくたって、わたしは幸せ!



 お題「部屋の片隅で」

12/7/2024, 12:49:42 PM