いぐあな

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300字小説

最後の願い

 病院のベッドから、もう頭の上がらないババアの枕元で囁く。
「最後の三つ目の願いは決まったか?」

 このババアが悪魔のオレを呼び出したときの願いが『娘の生命を救って欲しい』。あれから何十年経ったか、三つの願いを叶えれば、魂を貰える契約をして、オレはこのババアに憑いている。
 二つ目はババアの夫が末期ガンになったときの『穏やかに逝かせて欲しい』。なら。
「最後は自分の欲望の為に願ったらどうだ」
 オレの言葉にババアが笑む。
「……そうねぇ……」

「食えないババアだったぜ」
 ババアの魂を受け取ったジジイを見送る。ババアの最後の願いはオレの幸せ。
「……『幸せ』なんてオレには解らないけどな。アンタといた時間は悪く無かったぜ」

お題「欲望」

3/1/2024, 12:08:14 PM