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【言葉はいらない、ただ…】(小説)


言葉にしなくたって君が考えることは分かる。ずっとそう思っていた。残念ながらそれは事実ではなく、君を理解してると私が思い込んでいただけだった。けれど、君は私が考えていることを全て言い当ててみせた。12年間も一緒にいて、私は君を理解しているつもりで理想の友達というエゴを押し付けていたのだ。本当は違うとハッキリ言ってくれない君の悪い癖と、謝罪より先に言い訳が出てきてしまう私の悪い癖はずっとあの頃から変わらない。そう言い聞かせないと私たちの本当の思い出がなかったような気がしてしまうから。楽しかった思い出じゃなくていい、喧嘩したことだって私にとっては君との大切な時間だったから。

謝るのが遅くなったこと、理想を押し付けてしまったこと、本当に申し訳なかった。けれど、私はただ君と色んな所に行ってたくさん思い出をつくりたかっただけだった。病気にも屈しない、常に笑顔の女の子だって決めつけていた。言葉にしなくても分かり合えていると勝手に思って君を傷つけてしまった。君が本当は結構参っていて、病気の事を忘れるくらいにいつも通り振舞って欲しかったことも全て日記で知ったくらい、私は君のなにも知らなかった。

口下手な私には君くらいしか仲の良い人はいなかったけれど、君にはたくさん友達がいたようだから良い理解者がいることを願う。女らしくない私と仲良くしてくれた事に、とても感謝している。
もう私のことは嫌いになってしまっただろうから、この手紙を読むことはないのだろう。君に宛てたはずなのに、本来君に言うべきではないことまで書いてしまったかもしれない。もし読んでいたら、心を整理する為の私の最後のわがままだと思って許して欲しい。


私より

8/29/2024, 3:49:12 PM