『蝶よ花よ』
あの子が自分から家を出た、だなんて、そんなこと信じられません。
みなさんだってご存知でしょう?
あの子はまだ七歳なんです。
十歳だったら、もしかしたらそういうこともあるのかもしれません。
――いえ、それだって疑わしい。
ニュースにも取り上げられ、世間の目も集まり、あの子は有名になりました。
もはや、あの子の行方を探しているのは私だけではありません。
住所や本名は非公開とされていますが、そういうことを調べるのが得意な人はいくらでもいます。
暴き立てて騒ぐ人たちに興味はありません。
私はあの子を探し続けます。
だって、警察や消防が付近の川や池を虱潰しにさらっても、遺体はおろか所持品ひとつ見つからなかったそうじゃないですか。
私はあの子を探し続けます。
ええ、今度こそ、私の手から逃げ出さないように。
蝶よ花よと、大事に仕舞い込むのです。
8/9/2024, 7:03:28 AM