鏡の上に鏡の絵を描くという発想は、到底思いつかない。
確か『暗黒館の殺人』だったと思う。
詳細は伏せるのだが、山奥深くに住む館の住人たちは奇妙な秘密を抱いていて、特に館の主人は、毎日その鏡の上に描かれた鏡の絵を見るという。
当然絵なので、自身の姿は映らない。
そのことに主人はホッとするという。
そういった奇妙な行為をする。
絵は、たしか油彩だったか、水彩だったか忘れたのだが、まあ、やがて時が過ぎるごとに風化し、表面が剥げ、キラキラと鏡本来の性質が見えるようになる。
そのことに、館の主人は逆に恐れおののく、という場面がサラリと描かれる。
どうして?
という理由は、ネタバレになっちゃうので、書けないのですね。
『暗黒館の殺人』は、全4巻からなっていて、まあ1000ページは普通に超えるでしょうという長編ミステリ。
タイトル通り、『暗黒館』と呼ばれる真っ黒の洋館内で連続殺人が起こる。
いわゆるクローズドサークルというもので、この鏡の絵というもただの小道具かと思いきや、ちゃんとした機能を持つ、どんでん返しの一助を担う。
これだけでストーリーが浮かびそうなのに、こういったアイデアを多量に含ませて、あの長編ストーリーを描けるのは、やっぱり大御所だよね〜。
という感じに落ち着いてしまう。
8/19/2024, 6:09:47 AM