死にたい。
昔から思っていた。
命という重く、苦しいものを背負って生きたくなかった
首吊るのは嫌だ。
息ができないなんて。
落下死も嫌だ。
死なずに複雑骨折で一生寝たきりになるかも。
そんな私が選んだのは
溺死だった
息はできないけど綺麗な風景を見ながら死ねるなら許容範囲だ。
海に行った。私は海が好きだ
穏やかで美しいけれど、人を殺められる程の力を持っているところが。
チャプ、チャプ
水を切る音が心地よく耳に入る
ズブッと足を取られる
軽く尻餅をつき、前を見る
そこには月光を纏った美しい人が立っていた
「宝石の子よ」
低く、冷たい、まるで海水のような声で私を呼ぶ。
だが、この呼び方ははじめてだ。
「な、何でしょう」
「何故自ら命を絶とうとする」
「貴方には、関係、ないでしょう」
「嗚呼、無い。だが、私が好んでいる場所で…」
「私が好いていたものが死ぬのは気分が悪くなるし、況してや自殺など良いものではない」
神は澄ました顔でそう呟く
神から告られて、自殺止められるなんて聞いたことないよ。
「神って優しいんですね。」
私は笑いながら
「自殺はやめます。こんなふうに止められたら、逆らえませんよ。」
と言ってその場に立つ
「そうか。」
「でもその代わり、生きる理由を私に下さいな。」
「好いているものの願いなら聞いてやらんこともない。」
「交渉成立ですね。」
神が舞い降りてきて、私に言ったことが私の
死ねない理由になってしまった。
7/27/2023, 11:42:03 AM