悪役令嬢

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『愛があれば何でもできる?』

路地裏を歩いていたところを
何者かに拉致された悪役令嬢。
目を覚ましたのは、どこかの倉庫だった。
後ろ手に縛られて柱にくくりつけられている。

「よお、お目覚めかい」
「こいつ貴族だぜ」
「売り飛ばせば高くつくぞ」

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる半グレ共。
(金目当ての輩ですか……)
悪役令嬢がキッと彼らを睨みつける。

「なんだあ?その目つきは」
半グレの一人が生意気な態度を取る女を
殴りつけようとした次の瞬間────
倉庫の外で大きな物音が聞こえてきた。

「何だ?!」
飛び交う怒号とぎゃああという
断末魔にも似た悲鳴。
やがて音は止み、倉庫の扉がゆっくりと開かれた。

中に入ってきたのは、燕尾服を風に靡かせ、
銀髪を後ろに流した青年。

突然の襲撃に驚いた奴等が、
一斉に青年へと銃を向ける。
「野郎!ふざけやがって」

銃口から繰り出される鉛玉を青年は
難なく避けて、手にしたナイフを半グレ共
目掛けて放つ。

正確な投擲により奴等の喉は貫かれ
その場に崩れ落ちた。

奇跡的に急所を逃れた男の一人が、
ブラックジャックを腰から抜き去り
青年に襲いかかる。

「死に晒せええええ」

青年はくるりと一回転して攻撃をかわし、
流れるように男の懐へ忍び込むと
その身体を一直線に深々と切り裂いた。

まるで肉食獣を思わせるしなやかで繊細な動作だ。

この場を支配していたちりちりと肌を
刺すような張り詰めた空気が収まる。

一瞬で血の海と化した倉庫と
その中心に立つセバスチャン。

彼は床に転がる半グレ達には目もくれず、
主の元へ駆け寄り彼女を縛る縄を解いた。

「セバスチャン……」
「主」

先程まで殺気に満ちていた彼の目が和らぐ。

「ご無事でよかった」

5/16/2024, 6:15:03 PM