第二話
(全四話ほど予定している小説になります。)
「とりあえず大雨ではない!」
急いで裕斗にLINEを返した。
それから裕斗が家に迎えに来るまでの三十分で身支度とメイクをした。朝食を用意する時間は無さそうだったので、冷蔵庫の中にあったゼリー飲料を飲むことにした。
このゼリーは特別好きじゃないのに大手メーカーのものより二十円程度安いから、という理由でたまに買っている。味は美味しくはない。
バタバタと準備をしている今の自分にはそれくらいで合っているような気もして、その相応さに少し悲しくもなった。
裕斗は順調に職場で出世している。最近、会う度に仕事の話を聞かされて疲れていた。薄っぺらくて無機質な香料の味にここまで自分の感情を内省させられるとは。
お洒落する気にはなれなかったのでブラックのパーカーと楽チンできれいに見えるロングスカートを着ることにした。靴は履き慣れたスニーカーで。
裕斗はあまり服には興味を示さない。変わったデザインをしていたり、面白い素材で出来ているものに対してたまにリアクションが来るくらいだ。
そういえば前に、奮発して買ったブランドのブラウスを見せたら人魚みたいと言われたことを思い出した。それ以来高い洋服はなんとなく買う気が起きなくなってしまった。
そのうちに裕斗が家に着いて、いつものように車に乗り込んだ。同じ風景に見えても私には違って見えた。
裕斗には、いつものように映っているんだろうか?
「晴れてることを祈ってて」
行き先も告げず、裕斗はいつも行くスタバとは逆方向へハンドルを切って運転し始めた。
どうしてそんなに天気にこだわるのか疑問に思ったが、
裕斗は天然パーマだったことを思い出し、私は私を簡単に納得させようとしていた。
つづく
3/25/2024, 3:23:10 PM