わをん

Open App

『善悪』

気まぐれに蜘蛛を助けた悪人が地獄に堕ちたとき、善神は気まぐれに救いの手を差し伸べた。かぼそい蜘蛛の糸に群れた亡者を蹴落としてしまったがために悪人は善神から見放され、地獄に舞い戻る羽目になった。
悪人は亡者たちと話し合う。
「あの仏様ほんとに俺を助ける気があったんだろうか」
「亡者が群がるのが想定の範囲外とは考えにくいな」
「いろんな力を持ってる仏様が見積もり悪いとかちょっとがっかりだよな」
チラとかつて蜘蛛の糸が降りてきていた箇所を見つめてみるが特段変わりない。揃ってため息を吐く悪人たち。
しかしその日の地獄のおつとめは獄卒たちが少しだけ手を緩めてくれていた気がする、とのちに悪人は述懐した。

4/27/2024, 9:20:34 AM